プロダクトロードマップとは、プロダクト開発の目標や戦略、スケジュールなどをまとめたものです。プロダクトロードマップがあると開発の方向性が明確になり、プロジェクトを成功に導く重要な指針となります。

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しかし、効果的なプロダクトロードマップを作成するには、目的に応じた種類や内容を考慮する必要があります。具体的に載せるべき内容や作成手順が分からず、お悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、グッドパッチ流プロダクトロードマップの作り方を6つのステップで解説します。作成時のポイントも紹介するため、ぜひ本記事を参考にプロダクトロードマップを作成してみてください。

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  • ・ 直近の開発に手一杯になっており、中長期の視点でプロダクトを捉えられていない
  • ・ 事業視点中心の開発になっており、ユーザーの視点をうまく取り入れられていない

プロダクトロードマップとは?

プロダクトロードマップとは、プロダクト開発の目標や戦略、スケジュールなどをまとめたものです。主に以下のような目的で作成します。

  • プロダクトのビジョンや戦略を明確にするため
  • 開発を進める上での判断基準にするため
  • ステークホルダーとの連携を深めるため
  • ユーザーが体験する価値を向上し、事業収益の向上を素早く実現させるため

プロダクトロードマップを作成することで、開発チームやステークホルダーが共通認識を持てるようになり、プロジェクトを効率良く進めることが可能です。一般的にプロダクトマネージャーが中心となって作成します。

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プロダクトロードマップを作成する重要性

プロダクトロードマップは、プロジェクトを成功に導くための重要なツールです。

プロダクトロードマップという明確な指針があれば、開発チームは重要なマイルストーンに集中することが可能です。さらに、プロジェクトの要点を誰でも理解できるため、営業や広報などの他部署もそれぞれのやるべきことを把握できます。

特にステークホルダーが多い大規模なプロジェクトの場合、開発の目的や方向性にブレが生じることがあります。もしプロジェクトが迷走しても、プロダクトロードマップが指針となって方向性を示してくれるため、スムーズな開発には欠かせない存在です。

プロダクトロードマップの主な5つの種類

プロダクトロードマップにはさまざまな種類があります。ここでは、主な5つのロードマップを解説します。

  1. 戦略ロードマップ
  2. ステータス型ロードマップ
  3. リリースロードマップ
  4. ポートフォリオロードマップ
  5. アジャイルロードマップ

どのロードマップを選ぶべきかは目的に応じて異なります。また、複数のロードマップを組み合わせて作成することも有効です。それぞれの概要やメリットを把握し、適切なロードマップを選んで作成しましょう。

1.戦略ロードマップ

戦略ロードマップは、汎用的に使えるロードマップの1つです。さまざまな種類の情報を記載できるため、目的やステークホルダーに応じて内容を調整しやすい点がメリットです。

戦略ロードマップは、社内外のステークホルダーとの連携を強化したいときに役立ちます。理解を深めたい箇所にフォーカスして詳細を説明したり、図表やグラフを用いて視覚的に表現するなど、柔軟なカスタマイズが可能です。

2.ステータス型ロードマップ

ステータス型ロードマップは、プロダクト開発の取り組みを「現在」「次」「将来」の3つの軸で表現したものです。

時間軸で取り組みを整理するため、プロジェクトの進捗状況やタスクの優先順位を把握しやすい点がメリットです。ステータス型ロードマップは視覚的にも分かりやすく、社外のステークホルダーとの対話に重宝します。

3.リリースロードマップ

リリースロードマップは、タスクをいつ・どのように実行するかを示したロードマップです。MVP(Minimum Viable Product)開発から本リリースまでの、各フェーズで提供される機能や予定をステークホルダーと共有する際に活用できます。

リリースロードマップがあると開発予定の機能やスケジュールを容易に把握できるため、エンジニアのリソース調整にも役立ちます。

4.ポートフォリオロードマップ

ポートフォリオロードマップは、複数のプロダクトやチームにまたがるプロジェクトで使用します。プロジェクトの戦略を包括的に示したもので、通常は年に1、2度しか作成しない重要なロードマップです。

ポートフォリオロードマップは、事業責任者やプロダクトマネージャーがそれぞれの戦略を理解し、コミュニケーションを図るときに役立ちます。プロジェクトの中で特に重要なタスクや課題を明確にする際にも便利です。

5.アジャイルロードマップ

アジャイルロードマップは、開発のスピードを重視する際に効果的なロードマップです。一連のタスクを短いサイクルで繰り返すことで、複数のタスクを同時並行できるため、開発をスピーディーに進められます。

アジャイルロードマップは、プロジェクトの進捗状況を把握しやすく、開発チームが優先度の高いタスクに集中できる点がメリットです。

プロダクトロードマップに記載する6つの要素

プロダクトロードマップに記載する6つの要素

プロダクトロードマップには、主に以下の6つの要素を記載します。

  1. プロダクトビジョン
  2. フォーカスする順番
  3. プロダクト提供価値
  4. 顧客の理想状態
  5. 注力指標
  6. 理想状態に向けた価値提供案

ここでは、各要素の概要や記載する目的を解説します。具体的な作成手順は「グッドパッチ流プロダクトロードマップ作成の6ステップ」で解説します。

1.プロダクトビジョン

プロダクトロードマップを作成する上で「プロダクトビジョン」は欠かせません。

プロダクトビジョンとは、プロダクトを成功させるために目指すべき世界観です。明確なプロダクトビジョンはプロダクト開発の指針となり、チーム全体の方向性を統一する上でも重要な役割を果たします。

プロダクトの目的やユーザーに提供したい価値を整理して簡潔な文章にまとめ、プロダクトロードマップに記載しましょう。

2.フォーカスする順番

プロダクトビジョンを実現するために、どの機能や提供価値を優先的に開発すべきかを考え、プロダクトロードマップに記載します。優先順位は、プロダクトの目的やユーザーニーズ、開発リソースなどを考慮して決めましょう。

フォーカスする順番は、開発リソースの配分やプロダクトの成長を決定づける重要な要素となります。

3.プロダクト提供価値

プロダクトによってユーザーに提供したい価値を具体的に記載します。提供価値を明示することで、開発チームやステークホルダーが優先順位を決定しやすくなります。

ユーザーの課題を解決し、理想の状態に近づけるために必要不可欠なプロダクトの提供価値を明確にしましょう。

4.顧客の理想状態

プロダクトがユーザーにどのような影響を与えるのかを整理し、提供価値によって実現できるユーザーの理想的な状態を記載します。ユーザーの視点に立ち、プロダクトを利用すると「○○できるようになる」「○○する必要がなくなる」など、具体的に示しましょう。

理想状態を明示すると、ユーザーがプロダクトの価値を理解しやすくなり、利用する意欲を高められます。

5.注力指標

プロダクトの提供価値が達成できているかを測定するための指標を記載します。利用率や利用時間などの定量的な指標と、アンケートによる評価などの定性的な指標を決めましょう。

注力すべき指標を明確にすることは、プロダクトの改善や成長を図るためにも重要です。

6.理想状態に向けた価値提供案

ユーザーの理想状態を実現するために、どのような機能やサービスを提供するのかを示します。

価値提供案はプロダクト開発の方向性を示す重要な要素となるため、可能な限り具体的に記載しましょう。

グッドパッチ流、プロダクトロードマップ作成の6ステップ

ここからは、グッドパッチで用いられている、プロダクトロードマップの作り方を6つのステップに分けて解説します。ぜひプロダクトロードマップ作成の参考にしてみてください。

  1. ペルソナ設定と提供価値の明確化
  2. 価値マップの作成
  3. プロダクトビジョンの作成
  4. 中長期ロードマップの策定
  5. 短期的な計画の立案
  6. 定期的なレビューと改善

1.ペルソナ設定と提供価値の明確化

1.ペルソナ設定と提供価値の明確化

プロダクトロードマップを作成する上で欠かせないことが、プロダクトビジョンと提供価値の明確化です。

プロダクトビジョンや提供価値を明らかにするには、ユーザーを起点に「(プロダクトによって)誰をどうしたいのか」を考え、彼らが抱える課題や求める価値を理解する必要があります。

ユーザーの視点に立つために、仮想のペルソナを決めましょう。設定したペルソナを基に「この先ペルソナにどのようになってほしいか」「そのときペルソナは何に困っているか」などの問いに答える形で、提供したい価値や彼らが抱えるであろう課題を挙げていきます。

2.価値マップの作成

2.価値マップの作成

ペルソナを基に提供価値や課題を考えた後は、それぞれの要素をグルーピングし、関係性を構造化します。ペルソナが抱える課題と、課題を解決する提供価値を矢印でつなぎ、関係性を整理しましょう。

各要素を整理した図は「価値マップ」として次のステップで活用します。

3.プロダクトビジョンの作成

作成した価値マップを基に、プロダクトの目的や方向性、価値提供の方法などを「プロダクトビジョン」としてまとめます。プロダクトビジョンが明確になると、チーム全体が目的や方向性を共有でき、プロダクト開発の方針を固めやすいです。

プロダクトビジョンをまとめる際は、テンプレートを活用するのがおすすめです。

ペルソナの「現在の状況」や「抱えている課題」、提供価値によって「実現できる状況」などを一つの文章にまとめてテンプレート化します。各要素をテンプレートに当てはめていくと、誰にでも伝わりやすいビジョンが作成可能です。

【テンプレートの例】 ※()の部分を埋めて文章化しましょう

現在、(設定したペルソナ)が(ペルソナの願望)と望むとき、彼らは(ペルソナの状況)をしなければならない。この状況は(ペルソナが抱えるであろう課題)のため、受け入れられない。我々は(プロダクトの提供価値によって実現できる状況)を夢見ている。

4.中長期ロードマップの策定

プロダクトビジョンが作成できたら、いよいよプロダクトロードマップを設計します。プロダクトロードマップに記載する6つの要素」で解説した、以下の要素をロードマップに入れていきましょう。

  • プロダクトビジョン
  • フォーカスする順番
  • プロダクト提供価値
  • 顧客の理想状態
  • 注力指標
  • 理想状態に向けた価値提供案

まず「ペルソナをプロダクトビジョンに近づけるために何をすべきか」という問いを基に、プロダクトが提供すべき価値を考えます。挙げた提供価値を構造化して整理することで「プロダクトの提供価値」や「価値提供案」が明確になります。

4.中長期ロードマップの策定

提供価値が明確になったら、次に「提供価値がペルソナにどのような影響を与えるか」を考え、ペルソナの「理想状態」をクリアにしましょう。さらに、提供価値の達成度を測定する「注力指標」も併せて記載します。

最後に、どの提供価値から着手すべきかを考慮して「フォーカスする順番」を決め、プロダクトロードマップを完成させます。

5.短期的な計画の立案

プロダクトロードマップは作成して終わりではなく、活用してこそ意味があります。作成したロードマップを基に、まずは四半期〜1年間の短期的な活動計画を策定しましょう。

活動計画を策定する際は、事業目標や開発リソース、ユーザー価値などを考慮し、着手する優先度を決定します。

5.短期的な計画の立案

また、上記のロードマップはユーザー起点で策定した内容のため「事業収益を上げられる戦略になっているか」「自社が行う意味のある事業になっているか」といった事業観点を踏まえて計画を策定することも重要です。

6.定期的なレビューと改善

作成したプロダクトロードマップは、プロダクトの進捗を定期的にレビューしながら、必要に応じて更新していきましょう。

ステークホルダーからのフィードバックや市場の変化に応じて、柔軟なアップデートを行うことが大切です。アップデートが間に合わないと、指針がないまま開発を進めることになり、混乱や認識のズレが生じる可能性があります。

プロダクトの価値を最大化するためにも、定期的なレビューと改善を繰り返し、成果に貢献するプロダクトロードマップを作成しましょう。

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プロダクトロードマップを作成する際の4つのポイント

最後に、プロダクトロードマップを作成する際の4つのポイントをご紹介します。以下の点に注意し、プロダクトを成功に導くロードマップを作成しましょう。

  1. 目的に応じたロードマップを作成する
  2. 情報を詰め込みすぎずシンプルにする
  3. 要求に応えすぎない
  4. 現状のリソースやスキルで実現可能かを判断する

1.目的に応じたロードマップを作成する

プロダクトロードマップにはさまざまな種類があるため、目的に合ったものを作成することが重要です。特に、ロードマップが「内部向け」か「外部向け」かを意識しましょう。

プロダクト開発には、開発チームをはじめ、顧客や営業、取引先など、多数のステークホルダーが関係します。人によって重要な情報は異なるため、ステークホルダーに応じたロードマップを作成しなければなりません。

例えば、開発チームや営業などの内部向けであれば、社内でよく使用する表現や開発の詳細な情報を記載しても問題ないでしょう。

しかし、外部向けにロードマップを作成する場合、社外秘の情報は載せないよう注意が必要です。また、専門知識がない人の視点に立った表現が求められます。

2.情報を詰め込みすぎずシンプルにする

プロダクトロードマップは、情報を詰め込みすぎず、シンプルに作成することを心がけましょう。情報が多すぎると要点が分かりづらくなり、認識の齟齬が生じやすくなるため、混乱を招く可能性があります。

プロダクトロードマップは、開発の目的や戦略などの指針を示すツールです。細かいタスクは別の形で共有するなど、ツールを使い分けることで重要な情報を逃さず管理できます。

3.要求に応えすぎない

プロダクトロードマップを作成する際は、ステークホルダーの要求に応えすぎないことが重要です。

プロジェクトの計画時には、さまざまな意見が挙がり、アイデアが膨らみすぎることもあるでしょう。しかし、すべての要求を満たそうとすると、実現の可能性が低いロードマップになってしまいます。

プロダクト開発を成功に導くためにも、ビジョンや戦略にそぐわない要求は断ることも必要です。

4.現状のリソースやスキルで実現可能かを判断する

いくら完成度の高いロードマップができても、実現できなければ意味がありません。現状のリソースやスキルを考慮し、本当にロードマップが実現可能かどうかを検討する必要があります。

もし実現が難しい場合は、リソースを補充する、実現可能なレベルに引き下げるなどの判断も必要です。

プロダクトの実現可能性は、ステークホルダーとの信頼関係にも影響します。現実的に達成可能なロードマップかどうかを慎重に判断することが重要です。

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本記事では、グッドパッチ流プロダクトロードマップの作り方や、作成時のポイントを解説しました。プロダクトロードマップを作ることで、開発の目的や方向性が明確になり、スムーズにプロジェクトを進められます。

プロダクトビジョンで目指す世界観を実現するためにも、プロダクトロードマップの存在は欠かせません。本記事で紹介した作り方やポイントを参考にしながら、プロダクトロードマップを作成してみてください。

グッドパッチでは、貴社に合ったプロダクトロードマップ作成の支援が可能です。効果的なロードマップが作成できずお悩みの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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このような方におすすめです

  • ・ 事業責任者が開発責任者も兼任しており、人手も時間も足りない
  • ・ 直近の開発に手一杯になっており、中長期の視点でプロダクトを捉えられていない
  • ・ 事業視点中心の開発になっており、ユーザーの視点をうまく取り入れられていない