デザインプロセスワークショップ」やDX人材育成を目的としたコンテンツ提供など、グッドパッチは企業向けにさまざまなマインドセットやスキルアップを目的とした研修やワークショップを展開しています。

最近ではデザインの価値発揮領域が広がる中、独学や業務のOJT形式でデザインを会得しているという方も増えてきています。しかし、得た知識をどう使えばいいのか、改めて体系立てて学ぶ必要はないかと考える方も少なくありません。

先日、グッドパッチのファシリテーション&コーチングチーム「Marble」が、Sky株式会社様にワークショップを通じてUIデザインの基本を学ぶ「UI Design Basics Workshop」を実施しました。今回は研修に参加された皆さんに、どういったことを学べたのかをお話しいただきました。研修当日の様子と合わせてご覧ください。

UIデザインの知識とスキルを1日で Skyで実施したワークショップの全貌

自社商品のソフトウェア開発や業務システムなどの受託開発を手掛けるSky株式会社では、ユーザーに寄り添ったデザインや技術革新のさらなる強化に向け、社員の教育にも注力しており、デザイン力やチーム連携を強化する施策に積極的に取り組んでいます。

今回、研修の依頼をいただいたのは、自社商品開発と自社の業務システム開発に取り組む2つの部署に所属するデザイナーの方々から。WebベースのモダンなUIデザインの知識やスキルを獲得したいという目的でお声がけをいただきました。打ち合わせを経て、研修の目的を以下の2つに定めています。

  1. ユーザーからの要求・要件を、自分たちの力でUIまで落とし込むデザインプロセスを共に体感することで、共通言語・共通認識を作る
  2. 共創体験の過程で、UIデザインにまつわる基本的な知識や知っておくべきTipsを獲得する

今回の研修は1日(7時間)での実施となり、「研修後の実践の場(PJ)でベースとなるスキルやプロセスを組織の共有知として手に入れ、さまざまなプロジェクトで少しずつ生かしていける状態」をアウトカムとして定義し、設計しています。主なワークは以下の通りです。

  • アイスブレイク
  • UIデザイン概論:UIデザインプロセス概要・UIデザイン基礎
  • ユーザーストーリー作成ワーク
  • プロトタイプ作成
  • UIデザインTips
  • ブラッシュアップ(1)
  • ペアフィードバック
  • ブラッシュアップ(2)
  • 発表&講評
  • QAタイム
  • 振り返りワーク

ワークショップの様子

ワークショップ後の座談会には、企画に関わった方を含めて3人にお集まりいただきました。なぜグッドパッチに研修を依頼したのか、研修を通じてどのようなことが学べたのか。ワークショップに参加した感想などを伺いました。

Sky株式会社 ICTソリューション事業部 開発部 開発課 M.K.さん・M.M.さん・K.M.さん(左から)

Sky株式会社 ICTソリューション事業部 開発部 開発課 A.K.さん・M.M.さん・K.M.さん(左から)

社内にデザインのノウハウはあるが……体系的に知識を整理しつつ、外部の視点を取り入れたい

──今日はよろしくお願いします。まずは、今回の研修を行うことになった背景を教えてください。

M.M.さん:
開発部のエンジニアチームが技術研修を行うことになり、開発部に属する私たちもUI/UXに特化した研修を行うことになりました。過去にグッドパッチさんのデザインプロセスやユーザーインタビューのワークショップを別チームが受けたことがあり、好評だったことから今回もお願いした次第です。

UI/UXに特化した研修を行うのは初めてだったので、初回の打ち合わせは緊張したのですが、皆さんが話しやすい雰囲気を作ってくださって助かりました。おかげで「UI/UXに特化した研修を行うのであれば、業務上の悩みを解消したい」という希望も安心してお伝えできたなと思います。

──なるほど。どのような悩みがあったのでしょう?

M.M.さん:
大きく2つあります。1つはクラウドサービスならではのUI/UXへの対応です。当社は長年Windowsベースのアプリケーションを展開してきましたが、現在、主流になっているクラウドサービスはWebベースのモダンなUI/UX設計が求められます。パッケージソフトから考え方の切り替えが思うようにできていないことに課題を感じていました。

もう1つは、デザインのノウハウが内向きになっていた点です。Sky内には約30年間自社商品の開発を行う中で培ったノウハウがあり、デザインの根幹を支えていますが、それが客観的に見て正しいものなのかどうなのか、一般的な視点をきちんと理解した上で、UI/UXを考える必要があると思っていました。

また、私が入社した当時、UI/UX設計チームは3人でしたが、開発規模の拡大につれて人数も増え、現在では12人となりました。組織としてある程度の規模感になってきたので、メンバーがプロフェッショナルとしてスキルを伸ばせる環境を用意し、UI/UXの専任チームとして価値創出をしていきたいという思いもありましたね。

「直感的」よりも「慣用的」に UIデザインのレビューに明確な根拠を持たせる

──今回の研修に参加して、印象に残ったことや学びになったことを教えて下さい。

K.M.さん:
「使いやすさは、職業や人によって異なる」という話が印象に残っています。たとえ同じ職場であっても、職種や年齢によってUIの使い勝手への評価は変わる。そこをカバーするためにも、現場のさまざまなユースケースを押さえることが重要だと学びました。

普段仕事をしている中でも同じようなことは考えていたのですが、研修で改めて説明を聞いたことで、「やはりそうなんだな」と再確認できたと思います。

A.K.さん:
私は「表現モデルは『直感的』であるよりも『慣用的』であるべきだ」という話が印象的でした。これまではUI検討時に「これは直感的なのか」というレビューやフィードバックを受けることも多かったのですが、根拠として説得力がないことにモヤモヤしていました。

──なるほど。先ほどのお話同様、直感的かどうかは、人によって価値観や感覚が分かれそうです。

A.K.さん:
一方で慣用的、つまり「ユーザーが慣れている」ということを基準にした場合、「複数のサービスで同じ場所にボタンがあるということは、みんなが使いやすいデザインとして認知されている」といったように判断の理由が生まれます。

新たな使いやすさを検討するのも大事ですが、ユーザーが使い慣れている見た目やボタン配置にすることも大切。「慣用的」という視点を知ったことで、自身のUI検討時の視点がアップデートできたように思います。

M.M.さん:
「慣用的なデザイン」の話は、多くのメンバーの印象に残ったようです。私個人としては、既存のUIをどう変えるかを考えていたのですが、変えるべき箇所と残すべき箇所の線引きをきちっとすることが重要なのだと学びました。

「ウチのUIはこうだよね」という既存の積み重ねだけでは進化はしづらく、だからこそ画期的なUIを考えていかなければならない。そう考えていましたが「慣れないUIを使いたがるユーザーはいない」「攻める部分を絞ってチャレンジするのがいい」といった話を聞き、非常に勉強になりましたね。

研修の最後に「質疑応答タイム」 具体的な業務の課題もクリアに

──研修では「商談に向けて情報を集める」「商談後にマネジャーと振り返る」などユーザーの利用シーンを想定し、グッドパッチ側でユーザーシナリオを用意。それを基にユーザーのニーズを抽出し、商品に落とし込んでいくワークを行いました。

A.K.さん:
最初にグループワークでニーズをポストイットに書き出し、その後、各自でUI/UXに落とし込んでいく流れでしたが、全員のアプローチが異なるのが面白かったです。別のチームのメンバーと一緒にワークをすることで、改めていろいろな人の意見を聞くことの意味を感じました。それぞれに工夫があり、チームで働く醍醐味を感じる瞬間でもありましたね。

K.M.さん:
僕は研修の構成として、ワークの頻度が特徴的だと思いました。一般的な研修では最初に講義があり、その後ワークに進むパターンが多いですが、今回は細かくセクション分けがされており、講義とワークを交互に行うスタイルになっている。学んだことを即実践できました。

段階を経るごとに自分のアイデアがブラッシュアップされていく構成になっていて、普段の仕事ともリンクしているのを感じました。段階を踏んで成果物が仕上がり、見える課題も各フェーズで異なる。細かく区切る重要性を改めて理解できました。普段から「この段階まで一旦自分で考えて、その後ひとまず報告しよう」など、レビューをもらうタイミングは常に考えていますが、その考え方は正しかったのだと自信を持てるようになりました。

M.M.さん:
一方的に話を聞くだけでなく、みんなで会話をしながら手を動かす実践的なワークができたのはとてもよかったなと思います。雰囲気作りにも気を使っていただきましたね。ニックネームで距離感を縮めたり、BGMを流したりと、講師というよりデザイナーの先輩のお話を聞いているような感覚で受講できました。

A.K.さん:
和気あいあいとした研修だったなと思います。講師の皆さんがワーク中に席を回り、フィードバックしてくださったのもうれしかったですね。どんどん出てくるニーズを限られた時間内にUI/UXへ落とし込むのは難しかったですが、ニーズを出す中で思いがけない要素を発見したり、そこから発展させてより良いものができたりもして、最初に量を出してから情報を取捨選択するのが大事だと改めて思いました。

ワークショップの様子

ワークショップの様子

M.M.さん:
あとは、質問タイムが良い時間だったなと思います。今回はオリジナルの研修として講義とワークを前半に固め、最後に質疑応答の時間をしっかり設けていただいたのですが、非常に真摯に答えていただきました。

──どのような質問が上がったのでしょうか?

M.M.さん:
スクロールについての質問と回答は印象に残っていますね。データを大量に表示するページを作るとき、無限スクロールにするべきか、ページングにするべきか、というような。何がベストか明確な答えがないまま、「パフォーマンスの問題でスクロールにせざるを得ない」など、開発主体で判断することもあり、結果としてページによってUIがバラバラになっているという課題があったんです。

答えるのが難しい質問だったかと思いますが、世間一般でどう区分けしているのかお話しいただくだけでなく、「悩みますよね」という反応をいただけたのもうれしかったですね。悩んでいるのが私たちだけではないのだと分かり、安心しました。

K.M.さん:
僕は「UIはどうなったら慣用的になったと言えるのか」という質問をしました。「決まった答えはない」としながらも、「大手や利用者数が多いサイトが採用し始めたら、それは慣用的と言っていいのではないか」と一つの判断基準を教えていただき助かりましたね。

参加者からの質問に答えるグッドパッチのデザイナー

参加者からの質問に答えるグッドパッチのデザイナー

1日の研修でも、想像以上の影響力 社外のノウハウに目が向き、レビューの会話が変わった

──研修を終えて、仕事の仕方に変化はありましたか?

K.M.さん:
自分の中の意識が大きく変わったように思います。まだ研修を終えてから日が浅いので、これから業務をする中で具体的な変化がありそうだと期待しています。

A.K.さん:
私は普段アプリを触る時の意識が変わったように感じています。「使い勝手はどうか」「それはなぜなのか」など、視点がはっきりしました。例えば、Instagramなど多くのユーザーが使っているアプリには、たくさんの分かりやすさがあるはず。そういった観点はこれまでなかったように思います。

M.M.さん:
レビューの際の説明の根拠が社外に向くようになったのは大きな変化だと感じています。「なぜそのUIがいいと思ったのか」の説明は感覚的になったり、「自社商品の既存UIがこうだから」という説明になったりと、根拠が弱いこともあったのですが、研修後は「利用者が多い他社のサイトではこうなっている。おそらくこういう理由があると考えられるので、うちの商品にはこう取り入れるといいと思う」など、説明が具体的になりました。

──説明やフィードバックについて、共通言語を得たということですね。

M.M.さん:
また、代表的なデザインガイドライン事例を紹介していただいたのも勉強になりましたね。例えば、文字数が多いときに一部を隠し、ボタンを押すと全文が見られるようにするといった普段の業務で行っているデザインに、名前が付いていることを初めて知りました。

過去の業務を通じて磨いてきたものがある一方、それを体系的に説明できないことにもどかしさを感じていたのですが、「こういう理論があるから」と説明できれば説得力が変わります。今後もUIデザインの知識を整理し、貯めていけたらいいなと思っています。

──全体研修やマネジメント研修などはあっても、デザイナー向けの研修を行う企業はそれほど多くありません。今回UI/UXに特化した研修を行って、その必要性をどう感じていますか?

M.M.さん:
大きな意味があると思いました。1日の研修を受けただけですが、思った以上にメンバーやチームに変化があるのを感じています。それは日々の業務を何カ月と続けて得られるものではなく、社外の研修だからこそです。

また、研修で同じワークをしたことで、担当商品によってメンバーの個性が違うという発見もありました。当社の商品は大きく4つあり、商品ごとのチームに分かれて業務をしているのですが、担当商品によって考え方の傾向に違いがあったんです。商品ごとに目的やターゲットは異なり、エンジニア向けを想定したUIと営業向けのUI、小学生向けのUIでは考え方も大きく変わる。それがメンバーに色濃く影響を及ぼしているのだと気付かされました。

──「異なる考え方に触れた」というのは、先ほどお話に挙がりましたね。チームを超えて研修をする意義だと思います。

M.M.さん:
今後、メンバーが別の商品チームに異動する場合、元の商品の考え方に引っ張られることもあるかもしれません。担当商品が変わってもスムーズに切り替えられるよう、引き出しを複数持った人材育成に努めていきたいですね。今回はベーシックコースとして研修を組んでいただきましたが、中級、上級の研修がどのような内容になるのか、それにどこまで私たちがついていけるのかも気になっています。

A.K.さん:
自身のスキルが世の中から見てどの程度のレベルなのか、ぜひ知りたいです。研修を受けることで実感できることもあると思うので、またこういった機会があるといいなと思います。

M.M.さん:
デザイナーのキャリアパスを考えるときに、何ができたらプロフェッショナルと線引きするのか、判断が難しい部分もあります。一般的なデザイナーのレベル感を理解し、社内の事例なども考慮しながら、考えていきたいですね。その上で、さらに自分たちの強みを研ぎ澄ましていきたいです。

──お二人は初めてUI/UXの研修を受けてみて、いかがでしたか?

A.K.さん:
私はデザインの学校に通ったわけではなく、仕事をしながら社内のノウハウを学んできたので、研修の機会があること自体がうれしかったです。研修を通じて外部の方の知見を学べたのはもちろん、個人としてもチーム全体としても、外に目を向ける視点を得られたのは意味あることだと感じています。

K.M.さん:
今一度自分を見つめ直す良い機会になりました。凝り固まった考えを自ら打開しなければ、どんどんガラパゴス化してしまう。だからこそ、自分の考えは合っているのか再確認し、修正していく意味で、本当に良いきっかけをいただいたと思います。

M.M.さん:
今後も社内に閉じるのではなく、外の良いものをどんどん自社に取り込んでほしいですね。そうやってUI/UXデザイナーとしてのスキルアップにつなげてもらえればと思います。

Marbleについて

グッドパッチのファシリテーション&コーチングチーム「Marble」は、ワークショップやコーチングなどを通じて、組織や人の育成・変革を支援しています。

今回の「UI Design Basics Workshop」のような研修以外にも、新規事業創出支援やチームビルディング(組織活性化)といった個別の課題に対して、フィットするプログラムをご提案いたします。詳しい内容やお問い合わせはこちらからどうぞ。

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