本記事では企業の未来を担う「新規事業開発」について、成功プロセス、成功事例、大企業特有の課題と対処法、AI時代の取り組み方を解説します。
2011年の創業以来、デザインファームのパイオニアとして2000件以上のプロジェクトに関わり、支援企業9社の上場を実現してきたグッドパッチ。なぜ今、新規事業開発が求められているのかという背景から、独自開発した事業評価フレームワーク「BusinessDesign Review」を含む具体的で実体験に基づいた知見をお伝えします。
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目次
新規事業開発とは?
未開拓の市場や顧客に新たな価値を提供し「持続可能な収益モデル」を構築する取り組み
新規事業開発とは、未開拓の市場や顧客に対して新たな価値を提供し、持続可能な収益モデルを構築するための取り組みです。
満たされていないニーズに注目し、「もしこのような価値を提供できたらどうなるか?」という仮説を立てて検証を繰り返し、得られた結果を基にサービスやプロダクトとして事業化していくプロセスを指します。
「新たな収入源の確保」や「環境変化への対応」に必要
新規事業開発は、企業が新たな収益源を確保し、市場や社会の変化に柔軟に対応するために不可欠です。技術革新や価値観の多様化が進む中、既存のビジネスモデルだけでは収益の維持が難しくなるケースが増えています。
こうした背景から、複数の収益源を持つ「ポートフォリオ経営」の実現が重要視されるようになっています。特に、将来の見通しが困難な「VUCA(ブーカ)」時代においては、新規事業に挑戦し続けることが、企業の生き残りに直結します。
※VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、将来の予測が困難な状況を表します。
新規事業開発によって、収益源の分散と安定的な成長基盤を構築することが、持続可能な企業経営につながるのです。
新規事業開発の実施メリット3つ
新規事業開発の実施メリットは上記3つです。以下にて、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
「新たな収益源の確保」により事業ポートフォリオを拡張できる
新規事業開発のメリットの1つ目は「新たな収益源の確保により、事業ポートフォリオを拡充できる」ことです。
特定の事業に依存している企業は、市場環境の変化や競合の出現、法規制の変更といった外部要因によって業績が急激に悪化するリスクを抱えています。新規事業を立ち上げ、複数の収益源を持つことで、こうしたリスクを分散し、経営の安定性を高めることが可能です。
また、収益性の高い新たな収入源を確保できる点も、新規事業開発の大きな魅力の一つといえるでしょう。
「競争優位性の確立」を通じて市場でのポジションを強化できる
新規事業開発を行うメリットの2つ目は「競争優位性の確立に役立つ」ことです。
既存事業の延長ではなく、新しい視点やアプローチから価値を創出することで、他社には容易に模倣できない独自の強みを築くことができます。例えば、新たな市場を開拓したり、顧客体験やサービスの提供方法を再構築したりすることで、従来とは異なる競争軸を生み出すことが可能です。
新規事業を通じて“非代替性の高い価値”を創出することが、長期的な競争力の源泉となります。
「企業の持続的な成長」が中長期的な企業価値の向上につながる
新規事業開発を行うメリットの3つ目は「企業の持続的な成長」を実現し、中長期的な企業価値の向上につながることです。
新規事業開発には、新しい挑戦や学びを通じて、組織に変化への適応力を育む効果があります。これは、既存ビジネスでは得られにくい組織の進化を促す“トレーニング機会”ともいえるでしょう。
挑戦を受け入れる企業文化がイノベーションを生み出し、短期的な成果にとどまらず、長期的な価値創出の源になります。
新規事業開発を成功させるプロセス5つ

以下では、グッドパッチ独自の知見に基づき、新規事業開発を成功へ導く5つのプロセスを紹介します。
1.市場選定、顧客リサーチ

新規事業開発を成功させるプロセスの1つ目は「市場選定」と「顧客リサーチ」です。
新規事業開発の初期段階においては、適切な市場の選択と顧客への深い理解が重要です。市場全体の動向を把握し、自社が参入すべき領域を明確にすると同時に、顧客が抱える課題を多面的に分析していきましょう。
市場選定(市場理解|ポジショニング分析)
最初のステップは、市場理解とポジショニング分析を通じて外部環境を把握することです。
市場理解では、設定したテーマに関連する市場の動向を確認し、競合他社や既存サービスの特徴を深く分析します。その上で、自社がどのポジションを取るべきかを明確にし、事業成長の余地を見極めましょう。
ユーザーリサーチ(定性調査|定量調査)
| 分析する調査の種類 | 定性データ | 定量データ |
|---|---|---|
| 概要 | ユーザーインタビューや行動観察などで得られた発言や行動の記録を分析する | アンケートやアクセスログなどの数値データを統計的に分析する |
| ポイント | ユーザーの行動の背景にある「なぜ」を掘り下げ、本質的なニーズや課題などの質の高いインサイトを発見する | 市場全体の傾向やユーザー層ごとの特徴を「広く」客観的に把握し、データに基づいた意思決定を可能にする |
| 代表的な分析手法 | KA法、上位下位分析、価値 | クロス集計、クラスター分 |
次に、市場と顧客の実態を正しく把握するためのユーザーリサーチを実施します。調査は、「定性調査」と「定量調査」の2つの手法で実施します。
定性調査では、ユーザーインタビューや行動観察を通じて、数値では見えにくい行動や思考、課題の背景を深く理解します。「なぜそう感じるのか」「どのような場面で課題が発生するのか」といった質的な情報を収集し、アイデア創出や顧客ニーズの仮説構築の基盤を作ります。
一方、定量調査では、アンケートやアクセス解析などを通じて、ユーザーの傾向や市場規模を数値的に把握します。市場規模やユーザー全体の傾向を量的に把握し、立てた仮説の妥当性を検証したり、事業の優先順位を判断したりする際に活用します。
収集したデータは、多角的に整理・分析しましょう。上記表のポイントを押さえると、顕在化していないインサイトを見つけられるだけでなく、顧客自身もまだ気付いていない本質的なニーズを捉えられます。
ユーザーモデリング(ペルソナ|カスタマージャーニー|価値観マップ)
- ペルソナ:ユーザーの属性や特徴を具体化し、ターゲットとなる人物像を明確にする
- カスタマージャーニー:サービス利用時の行動・思考・感情を時系列で整理し可視化
- 価値観マップ:ユーザー行動の背後にある根本的な価値観や、潜在ニーズを掘り下げる
最後に、これまでのリサーチ結果を基にユーザーモデリングを行います。得られた情報を整理・構造化し、ユーザー全体の姿を可視化していくプロセスです。
「ペルソナ」「カスタマージャーニー」「価値観マップ」の3つの視点を活用し、ユーザーを階層的に理解することで、市場の魅力度と顧客ニーズを総合的に把握し、新規事業の方向性を明確に定めていきましょう。
2.事業コンセプト設計

- 事業アイデア立案
- 価値検証設計
- 事業コンセプトシートの作成
新規事業開発を成功させるプロセスの2つ目は「事業コンセプト設計」です。
市場選定と顧客リサーチで得られた知見を基に、上記のステップに沿って事業のコンセプトを具体化していきます。顧客にとっての本質的な価値を明らかにし、それをプロダクトの機能や特徴としてどう表現するかを検討します。
事業アイデア立案
顧客課題を解決するために、事業アイデアの「発散」と「収束」を繰り返しながら検討を進めます。質の高いアイデアを数多く生み出すには、フレームワークを活用し、多角的な視点で思考を広げることが重要です。
代表的なフレームワークの一つに「アンゾフの成長マトリクス」があります。これは「市場」と「製品」を、それぞれ「既存」と「新規」に分類し、4つの視点から成長戦略を整理する手法です。新規事業の立案では、特に「多角化戦略」の検討に有効です。
顧客視点をさらに深く掘り下げたい場合は、「JTBD(ジョブ理論)」の活用が効果的です。「顧客はなぜその商品を選ぶのか?」という問いを起点に、解決すべき“用事(ジョブ)”を特定し、そこから解決策を導き出します。
そのほかにも、成長戦略を3つの時間軸で描く「3ホライズンモデル」や、競合との違いを可視化する「戦略キャンバス」など、活用可能なフレームワークは多数あります。
価値検証設計
アイデアをすぐに開発へ移すのではなく、まずは「そのアイデアは本当に顧客の役に立つのか?」を見極めるために、価値検証を設計します。
この段階では、インタビューやテストは行わず、「何を、どこまで、どのように検証すれば、事業として進めるべきと判断できるのか」といった判断基準を明確にすることが目的です。
グッドパッチでは、本格的な開発(MVP開発)に進む前に、以下の3つの観点から価値検証を行うことを勧めています。
| 検証事項 | 概要 |
|---|---|
| 課題の検証 | ターゲット顧客は本当にその悩みを抱えているのか?深刻度は高いか? |
| ソリューションの検証 | 提供する解決策は、その悩みを適切に解消できるか? |
| 市場性の検証 | 顧客は対価を払ってでもその解決策を利用したいと思うか? |
ここで設定した仮説と検証項目は、次のプロセスである「コンセプト検証」において実際のユーザーに試すことで、事業の確度を高めていきます。
【関連記事】体験価値がユーザーに与える影響を探る「価値検証」とは
事業コンセプトシートの作成(グッドパッチ流)
事業アイデアを整理・可視化するために、コンセプトシートを作成しましょう。グッドパッチでは、新規事業開発支援の質を高めるために、事業性評価プログラム「BusinessDesign Review」を提供しています。このプログラムでは、事業成立に必要な要素を以下の3つの視点から評価します。
| 視点 | 確認事項 |
|---|---|
| 全体の整合性 | ビジネスモデルの各要素が矛盾なく連動しているか |
| 各要素の具体性 | 要素ごとの内容が具体的かつ実行可能であるか |
| 検証計画 | ビジネスモデルに対する仮説検証の計画が適切かどうか |
これらの視点で過不足なくレビューすることにより、検討フェーズからサービスデザインフェーズへのスムーズな移行に役立ちます。
3.コンセプト検証

新規事業開発を成功させるプロセスの3つ目は「コンセプト検証」です。ここでは、「価値検証設計」で定義した内容を実行に移し、「そのアイデアは本当に顧客の役に立つのか?」を具体的に見極めます。
作成したコンセプトシートを基に、ターゲット顧客へのインタビューや調査を実施し、事業コンセプトが受け入れられるかどうかを検証します。
検証の過程で改善が必要な点が見つかった場合には、その原因を分析し、具体的な改善策を検討します。必要に応じてコンセプトを磨き直し、プロダクト開発の方向性に反映させましょう。
このプロセスにより、仮説段階のアイデアを、実際の顧客ニーズに根ざした精度の高い事業コンセプトへと高めていくことが可能になります。初期段階で顧客の反応を確認することで、開発後の手戻りリスクを抑え、効率的かつスムーズな開発へとつなげることができます。
【関連記事】深ぼりすべきコンセプトをどう絞り込む?|定量コンセプトテストの進め方
4. PoC/実証実験による事業性の検証

- PoC検証設計
- PoC用のMVPプロダクト開発(プロトタイピング)
- 事業計画策定
新規事業開発を成功させるプロセスの4つ目は「PoC(実証実験)による事業性の検証」です。コンセプト検証で磨き直した事業アイデアについて、実際に顧客に対してコアとなる価値を持つプロダクトやサービスを提供し、実現可能性や収益性を見極めます。
本格的な事業投資を行う前にこの検証を行うことで、リスクを最小限に抑え、成功の確率を高めることができます。
PoC検証設計
PoC検証設計では、「とりあえず作ってみる」で終わらないよう、検証のゴールと評価指標を明確に定義することが重要です。まず、検証すべきリスクを以下の3つの観点から洗い出し、優先順位を設定します。
- 技術的実現性:システムやプロダクトが技術的に機能するか(=動くか)
- ビジネス採算性:収益性が見込めるか(=儲かるか)
- ユーザビリティ:ユーザーが問題なく使いこなせるか
優先順位を踏まえた上で、次のフェーズ(本開発)へ進むか、撤退・方向転換(ピボット)するかを判断するために、検証期間と定量的な成功基準(KPI)をあらかじめ設定し、関係者間で合意しておきます。
検証が長期化して開発が迷走することを防ぐためにも、出口戦略を明確に描くことが重要です。
PoC用のMVPプロダクト開発(プロトタイピング)
プロトタイピングでは、コアとなる価値を最小限の機能で実装したMVP(Minimum Viable Product)を定義し、開発を進めていきます。
事業アイデアをスピーディかつ高精度に改善・検証しながらリリースするための体制を整え、ソフトウェアデザインと開発ディレクションを効果的に連携させることが求められます。
高品質なソフトウェアを短期間で開発するためには、デザインとエンジニアリングのシームレスな連携が欠かせません。
【関連記事】MVPの作り方とは?最小限のコストで最大の効果を生み出すMVP開発の秘訣
事業計画策定
- 市場規模の算定(TAM/SAM/SOM)
- 収支計画・キャッシュフロー計画の作成
- 必要資源の洗い出し
- リスク分析と対策
- KPI/マイルストーンの設定と進捗管理方法の決定
PoCの結果を基に、本格的な事業化に向けた事業計画を策定します。
上記の各ステップを踏まえながら、市場規模や収益性、必要なリソース、リスクへの備えなどを総合的に検討し、実行可能な計画を立てましょう。また、事業化をスムーズに進めるためには、社内外のステークホルダーとの合意形成も欠かせません。
【関連記事】GTM(Go to market)戦略とは?成功に導く3つのフェーズを徹底解説
5.本開発、市場投入とグロース

新規事業開発を成功させるプロセスの5つ目は「本開発、市場投入とグロース」です。
事業の有効性がPoCで確認できたら、プロダクトの本開発を進め、市場へのリリースへと移行します。PoCで得られた学びを基に、顧客の課題解決を実感できるUI/UXを設計することが重要です。
リリース後も継続的にプロダクトを成長させるためには、体制の整備やビジネス領域での戦略策定が欠かせません。顧客からのフィードバックを収集・分析し、機能改善やマーケティング施策を強化することで、さらなる成長につなげていきます。
グッドパッチでは、新規事業の成功確度を高めるため、UI/UX設計から開発、リリース後のグロース戦略に至るまで、ワンストップで伴走支援を提供しています。強いコミットメントと熱量を持ったパートナーをお探しの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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新規事業開発の成功事例
| 会社名・新規事業 | 概要 |
|---|---|
| NTTドコモ | 回線契約から会員を軸とした事業運営へ(dポイント・金融関連サービスの立ち上げ) |
| ソニー | AV家電依存からの脱却 / 技術資産の新領域活用 |
| トヨタ | 「クルマをつくる会社」から「移動をつくる会社」へ |
| リクルート | 人材領域以外の収益基盤の強化(Airレジ・Airシリーズ) |
ここからは、実際の新規事業開発の成功事例をまとめました。新規事業を検討している方は、参考にしてみてください。
NTTドコモ|回線契約から会員を軸とした事業運営へ(dポイント・金融関連サービスの立ち上げ)

出典:NTTドコモ
| 主な取り組み |
|---|
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・dポイントのプラットフォーム化 ・d払いを中心とした決済・金融事業の構築 ・顧客データを活かした購買行動分析・CRM |
NTTドコモでは、従来の回線契約を中心とした事業が飽和状態に達していました。そこで2018年、事業の軸を「回線」から「会員」へと転換し、通信以外の新たな収益源の確保に大きく舵を切ります。
代表的な施策として、「dポイントのプラットフォーム化」を推進し、「d払い」を基軸とした決済・金融事業を展開。これらのサービスを通じて、顧客データを活用した購買行動分析やCRM(顧客関係管理)を強化し、ポイント経済圏の拡大を図りました。
| 成果 |
|---|
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・dポイント会員は9,000万超(国内最大級のポイント経済圏) ・通信以外の収益が大きく成長し“第二の柱”に |
その結果、dポイント会員数は9,000万を突破し、国内最大級のポイント経済圏を構築。通信以外の分野での収益も大きく伸び、ドコモにとっての第二の収益の柱へと成長しました。
ソニー|AV家電依存からの脱却 / 技術資産の新領域活用

出典:ソニー
| 主な取り組み |
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・CMOSセンサー事業をスマートフォン市場へ急拡大 ・EV領域(VISION-S)における新たな顧客体験のプロトタイプ開発 ・PlayStation事業をソフト・サービス中心に再構築 |
かつてのソニーは、テレビやオーディオといったAV家電が売上の中心を占めており、市場の成熟や競争激化により、収益構造の見直しが急務となっていました。そこで同社は、「家電以外の成長事業の創出」を掲げ、社内に蓄積されたセンシング技術を生かし、画像センサー事業を新たな中核事業として育成する戦略を打ち出します。
2015年には、半導体事業を分社化しSony Semiconductor Solutions(SSS)を設立。研究開発と設備投資を集中的に行える体制へと再編し、イメージセンサー事業の成長基盤を整備しました。
| 成果 |
|---|
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・イメージセンサー事業が世界シェアNo.1を獲得 ・EV参入が高評価を得て、異業種との協業モデルへ展開 |
SSSは、スマートフォン市場の急成長に合わせて、裏面照射型や積層型CMOSセンサーなどの独自技術を強みに事業を拡大。その結果、イメージセンサー事業は世界シェアNo.1(2025年時点)を達成し、現在ではソニーグループを支える主要な収益源の一つへと成長しています。
トヨタ|「クルマをつくる会社」から「移動をつくる会社」へ

出典:トヨタ
| 主な取り組み |
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・e-Paletteによる自動運転モビリティ構想 ・Woven City(実証都市)の推進 ・MaaSプラットフォームの開発 |
トヨタは自動車メーカーとして広く知られていますが、少子高齢化やカーシェアの普及、都市化・環境問題といった社会課題を背景に、2018年に「モビリティカンパニー」への転換を宣言しました。これは、「クルマを売る会社」から「移動の価値を提供する会社」へと事業の軸をシフトする戦略です。
この取り組みの中核を担うのが、「e-Palette構想」です。完全自動運転と電動化を前提に、移動型の店舗やオフィスなど、空間そのものをサービスとして提供する新たなモビリティの形を提示しています。e-Paletteは、CESや東京五輪などで運用デモを実施し、社会実装への一歩を踏み出しました。
さらに、静岡県裾野市で建設が進むスマートシティ「Woven City」では、街全体を実験場と位置づけ、自動運転、ロボティクス、AI、スマートホームなどの先端技術の実証が行われています。また、モビリティデータの提供や、企業・自治体向けのオンデマンド交通など、MaaSプラットフォーム(例:MONET)の開発も推進中です。
| 成果 |
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・自動運転・都市OSを含む「未来都市構想」の実証が進行 ・モビリティデータを活用したエコシステムを構築中 |
こうした取り組みの結果、Woven Cityとe-Paletteを中心に、「都市 × モビリティ × データ」の実証が加速。自動運転、ロボティクス、デジタルツイン(現実空間をデジタルに再現する技術)といった次世代領域における研究開発体制が強化されています。
リクルート|人材領域以外の収益基盤の強化(Airレジ・Airシリーズ)

出典:リクルート
| 主な取り組み |
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・小規模店舗向け「Airレジ」の無償提供 ・決済、予約、勤怠管理など店舗運営全般のSaaS化 ・顧客データを統合し、CX(顧客体験)の改善を推進 |
リクルートは、従来の人材広告・HR領域において収益を支えてきましたが、景気変動の影響を受けやすいという課題を抱えていました。この課題に対応すべく、事業ポートフォリオの多角化を目的に、中小店舗のデジタル化を支援するSaaS事業へと大きく舵を切ります。
転機となったのは、2013年に提供を開始した無料のPOSレジ「Airレジ」です。Airレジは、iPadで利用できる初期費用ゼロのPOSレジであり、「無料で普及させ、周辺サービスで収益化する」というビジネスモデルを採用。中小規模の店舗に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に後押ししました。
| 成果 |
|---|
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・Airシリーズは国内有数の店舗管理プラットフォームに成長 ・リクルートの第二の事業の柱として定着 |
こうした取り組みにより、Airシリーズは国内トップクラスの登録店舗数(数十万規模)を獲得し、小規模店舗向けSaaSとして圧倒的なシェアを確立しています。
結果として、リクルートは従来の広告・HR領域への依存から脱却し、Airシリーズを「第二の事業の柱」へと育成。SaaS企業としての進化を実現しています。
グッドパッチが支援した新規事業開発の成功事例
続いて、グッドパッチが支援した新規事業の成功事例をご紹介します。
グッドパッチは、ヘルスケア、地方創生、HR、SaaS、経済情報サービスなど、幅広い分野において新規事業開発を支援してきました。以下に、代表的な取り組みの一部をご紹介します。
組織成長ソリューション「TEAMUS」

出典:TEAMUS|コクヨの組織成長ソリューション「TEAMUS」 グッドパッチとタッグを組み、チームへの想いを乗せたプロダクトができるまで
コクヨ株式会社は、組織成長ソリューション「TEAMUS(チームアス)」を2025年4月にリリースしました。文具や家具、オフィス空間デザインを手がけてきた同社にとって、人事領域の事業は初めての挑戦です。
「オフィスを作った後にお客さまとどうつながっていくか」という課題から新規事業の探索を開始。市場調査やインタビューを通じて、人材や組織という領域に未解決の課題があると判断し、チームの成長を支援するソリューションの開発に至りました。
グッドパッチは、プロトタイピングから正式リリースまで伴走。「なぜこの事業をやるのか」という問いから始め、TEAMUSが目指す価値を言語化・可視化していきました。開発では「成長に向けた動機付けができているか」を重視し、チームが前向きに改善に取り組めるような体験設計を追求しました。
プロジェクトオーナーからは「異なる専門性を持つメンバーが議論を交わしたことで、当初の期待を大きく超えたプロダクトを創れた」と評価されています。
コクヨ株式会社への支援後インタビュー記事を読む
ヘルスケアアプリ「SUNTORY+(サントリープラス)」

出典:SUNTORY+(グロース)|小さな「できた」が楽しく続く健康アプリ。
サントリー食品インターナショナル株式会社は、従業員の健康行動を習慣化するヘルスケアアプリ「SUNTORY+(サントリープラス)」を2020年にリリースしました。
該当サービスは、健康経営への注目が高まる中、“継続される健康行動”を生み出す新規事業として構想されたプロジェクトです。
グッドパッチは2018年12月の構想段階から共創パートナーとして参画し、0→1のアイデア創出からブランド設計、アプリ開発、グロース、プロモーションまで一貫して伴走しました。
デザインスプリントを活用して検証サイクルを高速に回し、ユーザー理解と価値検証を並行して実施。さらに「タスクを選んで達成ボタンを押す」というコア機能に絞り込んだワーキングプロトタイプを早期から活用することで、議論の質が「想像」から「事実」に基づくものへと変化し、スピーディな意思決定とサービスの具体化を実現しました。
リリース後は、ユーザー継続率が平均50%をキープするなど、健康アプリとしては異例の高い水準を記録(一般的な健康アプリは1ヶ月後に15%を切る)。現在(2026年)では導入社数1,500社を突破するなど、事業としても飛躍的な成長を遂げています。
サントリー食品インターナショナル株式会社への支援事例をDLする
お取り寄せグルメサービス「mitaseru」

出典:mitaseru(ミタセル)|三井不動産グループの厳選お取り寄せグルメサービス「mitaseru(ミタセル)」のPoC支援
株式会社mitaseru JAPANは、三井不動産グループの事業提案制度「MAG!C(マジック)」を通じて、急速凍結技術を活用し有名飲食店の料理を食卓へ届けるお取り寄せサービス「mitaseru(ミタセル)」を2024年4月に事業化しました。
MAG!C審査通過後、事業化を進めるにあたり「顧客像の明確化」が課題となっていました。どのような人が、どのようなシーンで商品を購入するのか、エンドユーザーの価値観や行動原理を正しく理解する必要があったのです。
グッドパッチは2021年10月から2カ月間、事業の提供価値を洗練させるPoC(概念実証)支援を実施しました。 限られた期間で必要な探索と検証を行うため、リサーチとプロトタイプ制作を同時並行で進行。日記調査、密着調査(観察調査)、インタビュー調査を通じて、献立を考えるところから片付けまでの「見えない家事」を含めた一連の食体験における顧客の価値観を深掘りしました。
さらに、ECサイトから商品パッケージ、解凍手順を記したチラシまで、購入から実食までのリアルな体験を再現したプロトタイプを制作。実際の利用シーンを観察することで、企画書では見えてこなかった課題や改善点を発見しました。
こうした徹底的な顧客理解のプロセスを通じて、事業に潜んでいたバイアスを排除し、真に求められる価値を明確化。約2年の検証期間を経て、2024年4月にmitaseru JAPAN株式会社として事業化を実現しました。
株式会社mitaseru JAPANの代表取締役の松本様からは「グッドパッチと協業した2カ月間で、実際にユーザーの声を拾いながら突き詰めた顧客視点のサービスであると社内でも理解してもらえたところが、事業化へつながったポイント」と評価されています。
株式会社mitaseru JAPANへの支援事例をDLする
新卒採用支援SaaS「ワンキャリアクラウド」

出典:ワンキャリアクラウド|学生の本音をもとに、採用活動を。
「ワンキャリアクラウド」は、戦略人事を支援するSaaSプロダクトで、新卒採用における課題解決を目指したソフトウェアです。
学生支持率No.1の就職サイト「ONE CAREER」を運営している株式会社ワンキャリアが開発しました。同社が独自に保有する30万件の学生の声をもとにしたデータやコンテンツを活用し、これからの新卒採用の課題をソフトウェアの力で解決します。
新規事業の立ち上げであったため、ユーザーからの反応を見ながらサービスの方向性を見極める必要がありました。そこでグッドパッチでは、限られたリソースを有効活用し、不確実性を乗り越えるために「アジャイル開発」を取り入れました。
2週間ごとに機能の優先順位検討、実装、レビューを反復的に繰り返すスクラムベースのプロセスを採用。デザイナーとエンジニアが密にコミュニケーションを取り、1つのチームとして開発を進めることで、スピーディなプロジェクト進行を実現しました。
さらに、プロダクトの将来的な拡張性を見据え、デザインのアーキテクチャ設計からデザインシステムの提案まで実施。クライアントからは「会社の資産・アセットになるものを残してもらえた」と評価されています。
株式会社ワンキャリアへの支援事例をDLする
目標達成・習慣化アプリ「Habee」

出典:Habee|JTの新たな挑戦、目標達成・習慣化アプリ「Habee」はどう生まれた? 開発プロジェクトの裏側に迫る
日本たばこ産業株式会社(JT)は、目標達成・習慣化を支援するスマートフォンアプリ「Habee(ハビー)」を2024年9月にリリースしました。
たばこ事業を中核に展開してきたJTが、グループパーパス「心の豊かさを、もっと。」の実現に向けて立ち上げた新規事業サービスです。アプリのコンセプトのみが決まっていた段階から、グッドパッチが1年以上にわたって伴走支援を実施しました。
グッドパッチはコンセプトのブラッシュアップ、事業戦略の策定、UI/UXデザイン、開発まで一貫してサポート。ユーザーインタビューやワークショップを通じてインサイトを抽出し、「友達同士でゆるく楽しく習慣化を目指す」というコアコンセプトを確立しました。
プロジェクトオーナーからは「適切に取捨選択した上で的確な提案をしてくれた。その積み重ねが意思決定につながり、安心感を生む要因になった」と評価されています。
日本たばこ産業株式会社(JT)への支援後インタビュー記事を読む
Legaseed初となるSaaSプロダクト「miryo⁺」

出典:株式会社Legaseed|事業アイデア創出 ・ビジネスモデルと事業計画の策定
株式会社Legaseedは、CXクラウドサービス「miryo⁺」をリリースしました。
新卒採用コンサルティングのリーディングカンパニーとして知られる同社では、新規事業開発を進めたい一方で、ソフトウェア開発に関する経験不足が課題でした。
新規事業の立ち上げにあたっては、まず経営ビジョンの可視化から着手し、ターゲットとなる顧客へのインタビューを通じてインサイトを抽出。
その後、プロトタイプを用いたコンセプト検証や事業計画の策定まで、一連のプロセスを一貫して支援しました。役員会議用のプレゼン資料や、銀行融資獲得のためのP/L作成など、事業を推進するための総合的なサポートを実施。ビジョン・顧客理解・検証・計画づくりを連動させ、事業としての確度を高めていきました。
上記のプロセスを経て、同社初のSaaSプロダクトとなる「miryo⁺」が誕生。既存事業とのシナジーを踏まえた成長戦略を描き、Legaseedにとって新たな事業の柱となり得るサービスが構築されました。
株式会社Legaseedへの事例記事を読む
新規事業開発における大企業特有の課題(対処法付き)
大企業では、組織の構造や意思決定プロセスが複雑なゆえに、新規事業開発がスムーズに進まない場合があります。特に起こりやすい課題と、乗り越え方についてまとめました。
社内承認の獲得が目的化してしまう
新規事業開発における大企業特有の課題の1つ目は、社内承認を得ることが目的化してしまうことです。
新規事業は本来、顧客の課題を解決し、新たな価値を創出するための取り組みであるはずです。しかし大企業では、途中から「社内決裁を通すこと」自体がゴールとなり、本来の目的から乖離するケースが少なくありません。
この課題への対処法として、チーム全員が以下の4つの問いに明確に答えられる状態を整えることが重要です。
- 誰のための事業なのか?
- どのような課題にアプローチするのか?
- どのように解決するのか?
- この事業で、世界をどう変えたいのか?
これらの問いに対する解像度が高まることで、プロジェクトの目的が明確化され、意思決定も迅速に進むようになります。また、本質からのブレを防ぎ、社内調整の場面でも一貫した判断軸を持つことができます。
「モノをつくること」が目的となり、本質を見失う
新規事業開発における大企業特有の課題の2つ目は、モノをつくるという認識に偏ってしまうことです。
プロダクトや機能の議論に終始してしまうと、ユーザー体験(UX)全体の設計という視点が抜け落ちる場合があります。新規事業の開発において重要なのは、「モノ単体」ではなく、それを含むサービス全体として、どのような価値ある体験を提供するかという視点です。
例えばECサービスを例にすると、「注文から商品が届くまでの体験」→「開封時の体験」→「リピート購入につながる関係構築の体験」までを、一貫したユーザー体験として設計することが求められます。
モノを中心に据えるのではなく、体験全体の流れを設計する視点を持つこと。それが、事業の価値を最大化するために不可欠です。
企画書の作成に偏り、プロトタイプをつくらない
新規事業開発における大企業特有の課題の3つ目は、企画書に没頭するあまり、プロトタイプを作らないケースです。
企画書のみで議論を進めると、内容が抽象的になりやすく、実現可能性の判断が難しくなるという問題があります。
この課題への対処法としては、できるだけ早い段階からプロトタイプを作成し、それを基に議論を進めることが重要です。実物を目の前にして議論することで、抽象論に陥ることなく、具体的な課題や設計上の不整合が可視化されやすくなります。
結果として、生産性が高まり、アイデアの破綻やリスクも早期に発見・修正できるようになります。
新規事業開発における社内承認プロセスの突破法
大企業における新規事業開発では、社内承認のプロセスが大きなボトルネックとなることが少なくありません。ここでは、承認を円滑に得るための具体的なアプローチを2つの観点から紹介します。
確実性を示す情報の提供
新規事業開発における社内承認プロセスの突破法の1つ目は「確実性を示す情報の提供」です。
承認を得るには、市場規模や収益性の見通しを定量的なデータで明示することが不可欠です。例えば、BusinessDesign Reviewのように、数値ベースで事業性を評価した資料を整理しておくことで、企画の信頼性を高めることができます。
さらに、プロトタイプを用いて実際の顧客反応を提示できれば、企画書だけでは伝わりにくい具体性と説得力を補完できます。
加えて、段階ごとの投資判断を可能にする明確なマイルストーンを設計しておくことで、意思決定側の心理的ハードルも下げやすくなります。
他部門との連携促進
新規事業開発における社内承認プロセスの突破法の2つ目は「他部門との連携促進」です。
部門間で共通理解を築くことができれば、承認時の抵抗や誤解を未然に防ぐことが可能です。そのための手段として、デザイン思考を取り入れたワークショップの実施が有効です。関係者が同じ課題意識と目的を持つことで、議論の質とスピードが向上します。
また、開発・営業・マーケティングなど、既存の社内リソースと新規事業がどのように結びつくかを明確にすることも重要です。新規事業が単独の取り組みではなく、社内全体の成長戦略の一部であることを示すことで、協力体制を築きやすくなります。
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AI時代の新規事業開発
AIが急速に進化する現代において、新規事業開発の在り方も大きく変化しつつあります。
今後は、AIに任せられる領域と、人間にしか生み出せない価値をどのように設計するかが、事業創出の質を左右する重要な視点となります。本章では、AI時代における新規事業開発の考え方と、AIを戦略的に活用するためのアプローチを紹介します。
AIが代替できない領域
AIの進化が加速する中においては、新規事業開発でも「AIでは代替できない価値」を磨くことが、これまで以上に重要になります。中でも、選ばれるブランドを構築する力や、人間の感情や背景と結びついたストーリーが生み出す本質的な価値は、AIでは再現しにくい領域といえるでしょう。
例えば、
- なぜこの事業が存在するのか
- 誰の、どのような課題に向き合っているのか
といった問いに対して、共感性のあるリアルなストーリーを描けるかどうかが、事業の意義とブランドの信頼性を左右します。
AI活用による新規事業開発の高度化
AIを適切に活用することで、新規事業開発におけるスピードと精度は飛躍的に向上します。以下のように、段階的に導入を進めることで、効果的に高度化を図ることが可能です。
- レベル1:通常チャット活用による生産性改善(5%)
→日常業務でAIチャットを活用し、調査・文章作成・要約などの作業効率を改善。 - レベル2:社内ナレッジ接続による洞察共有(20-30%改善)
→社内ドキュメントやナレッジをAIと連携し、部門間で知見を活用できる状態を構築。 - レベル3:知識循環・自律最適化による経営意思決定の高速化(70-90%改善)
→AIが学習と提案を繰り返す仕組みを構築し、経営層の意思決定を支援・加速。
まずは、レベル1の取り組みから着実に実行するだけでも、現場の業務は確実に変化します。小さな導入から始めることで、社内への理解と定着が進み、段階的な高度化にもつながります。
新規事業開発のご相談はグッドパッチへ
新規事業開発は、常に不確実性と向き合う取り組みです。成果を生み出すためには、不確実性を段階的に検証・解消していくプロセス設計が不可欠です。グッドパッチでは、13年にわたる実績と知見を基に、以下の要素を統合した新規事業開発支援を提供しています。
- BusinessDesign Reviewによる科学的な事業性評価
- ワーキングプロトタイプを活用した実践的な検証
- 顧客開発を最優先とした価値創造
- 事業共創型モデルによる長期的パートナーシップ
- AI時代に対応した新しいビジネスモデル構築
不確実性の高い状況でも、一歩ずつ確実に前進できる仕組みとチーム体制を整えています。新規事業開発に課題をお持ちの際は、ぜひお気軽にグッドパッチまでご相談ください。
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