2025年、グッドパッチに新設されたデザイナートレーニングチーム「hatch」。このチームにはまだ即戦力ほどのスキルはないけれど、デザインへの熱意とそれを表す行動力を武器に入社したメンバーが所属しています。
今回、hatchから初めて卒業することになったサービスデザイナーの須藤にお話を伺いました。
ITコンサルタント職からサービスデザイナーに転身した背景やオリジナル研修「模擬クライアントワーク」から得た学びを実務でどう生かしているのかなど、キャリアチェンジ後のリアルな挑戦と成長について語ります。
目次
「一生この仕事をやるイメージが湧かない」。ITコンサルタントからUXデザインの道へ

プロフィール:須藤光
2020年明治大学卒業後、ベンチャー総合コンサルファームに入社。ITコンサルタントとして様々な業界でのシステム開発保守・更改プロジェクトに従事。PL・PMOとして要件定義からリリースまで一貫して携わり、プロジェクトマネジメントを遂行。2025年8月にグッドパッチのデザイナートレーニングチーム「hatch」にサービスデザイナーのトレーニーとして入社。
──須藤さんは前職でITコンサルタントとして働かれていたそうですが、そこからデザインの領域に興味を持ったのはどのようなきっかけだったのでしょうか。
新卒で入社した前職では、主に基幹システムのデータ移行やシステム更改といったバックエンドのプロジェクトに携わっていました。情報を整理し、いかに業務を効率化するかという「How」の部分をひたすら考える日々でした。
もちろんやりがいはあったのですが、ずっと裏側のシステムを担当していたため、「自分が行っている仕事が、エンドユーザーの体験にどう影響しているのか」が全く見えなかったんです。ユーザー受け入れテスト(UAT)を実施しても、直接ユーザーの反応を見られる機会は限られていました。
そうして働き続けるうちに、「自分が一生この仕事を続けているイメージが湧かない」と漠然と感じるようになりました。
──そこからどうやってUXデザインへと結びついていったのですか。
そんな自分を見抜いていたのか、当時の上司が「自分の情熱を持てる領域や、専門性を探してみたらどうか」とアドバイスをくれたんです。
自分の過去を振り返ると、幼稚園のころから新幹線やロボットの絵を描くのが好きでしたし、大学では機能デザイン研究室で「折紙工学」をテーマに研究をしていました。もともと建築や空間デザインにも興味がありましたし、日常的にNotionを使って自分専用の画面やUIを考えるのがすごく好きだったんです。
また、コンサルタントを志望した理由の一つに「いつか自分のサービスや事業を持ちたい」という思いがありました。ビジネスの視点を持ちながら、サービスの立ち上げからグロースまでを一貫して経験できる領域は何かと考えたとき、アプリケーションのUI/UXデザインに強く惹かれ、デザインの専門学校に通うようになりました。
──働きながら通ったんですよね?バイタリティがすごいです。実際にデザインを学んでみていかがでしたか。
非常に刺激的でした。特にUXのコースで体験した、ユーザーインタビューやユーザビリティテストが本当に楽しかったですね。
自分が想定していない動きをユーザーがすることの面白さや、「そんな考え方があるのか」という発見が毎回ありました。システムや環境の制約を起点に考えるのではなく、ユーザー目線に寄り添って「Why」を考えるというプロセスが、自分にとってすごく新鮮だったんです。
──その学校での学びが、転職を考える決定打になったのでしょうか。
そうですね。実は学校に入った当初は転職をしようとは思っていなくて、コンサルタントとして自身の活躍の幅を広げるために入っていました。ある日の学校の課題で、チームメンバーと一緒に「トイレの場所を探せるアプリ」を作ったんです。そのアプリを皆の前で発表したところ、先生からもクラスメイトからも「すごく面白いね」とポジティブな評価をもらうことができました。
自分たちが考えたアイデアを形にして、誰かに評価してもらえる。この「ものづくり」の純粋な楽しさを味わった瞬間、「これを仕事にしたい」と強く思ったんです。最悪給料が下がってもいいから、自分が納得できるまでデザインの道に挑戦してやろうと決意を固めました。
──さまざまな企業がある中で、グッドパッチを選んだ決め手は何だったのでしょう。
以前からグッドパッチの「カルチャー崩壊ブログ」などを読んでいて、組織の失敗や課題を外にさらけ出せる透明性の高さに惹かれていました。「人を大切にする会社」という印象を持っており、カルチャーも合いそうだと思っていたので、いつかこんな環境で働けたらいいなと漠然と思っていたんです。
ただ、実務経験がない自分にはハードルが高いだろうと応募をためらっていたところ、秋野さん(hatchトレーナー)からスカウトのお声がけをいただきました。最初は驚きましたが、カジュアル面談でhatchというトレーニングチームの存在を知り、ここなら未経験からでも挑戦できるかもしれないと思い、飛び込むことを決めました。
マイナス200点からのスタート?「模擬クライアントワーク」で知った実践の壁
──入社後、hatchのプログラムの一環である「模擬クライアントワーク」がすぐに始まったと伺っています。実際の業務に近い形式で進むプロジェクトはいかがでしたか。
率直に言って、手探り状態で大苦戦しました(笑)。4人でプロジェクトチームを組み、タスク管理や進行の舵取りを私が中心になって行うことになりました。しかし、デザインプロジェクトが初めてで、何をどう進めればいいのか全く分からなかったんです。
──実践は初めてですよね。学校で学んだ知識と実践とは差があったのでしょうか。
そうですね。デザインプロセスの全体像は学んでいましたが、「知っていること」と「実際にやれること」には天と地ほどの差がありました。実は模擬プロジェクトが始まって最初のクライアントとの打ち合わせで、大きな失敗をしてしまったんです。
──どのような失敗だったのでしょうか。
前職で慣れていたウォーターフォール開発では、最初に要件をしっかりと固めるため、後から手戻りが発生することはあまりありません。しかし、デザインプロセスは探索的であり、その時々の状況で、進め方を柔軟に変えていく必要があると教わっていました。
私はその違いをクライアント役に誠実に伝えなければならないと思い、スケジュールを説明する際、「このスケジュールには予期せぬリスクが含まれています」と言ってしまったんです。
──確かに伝え方が……(笑)。クライアントからすると、不安になりますよね。
そうなんです。クライアント役からは当然「そんなリスクがあるなら、プロジェクトは任せられません」と厳しい指摘を受けました。
うまくフォローすることもできず、ミーティング終了後、クライアント役の先輩に「正直、今日の私のファシリテーションは何点でしたか?」と恐る恐る聞いたところ、「マイナス200点です(鬼マーク付き)」と宣告されました。「僕のグッドパッチ人生は終わった」と本気で落ち込みましたね。
──マイナス200点からのスタート。そこからどのようにプロジェクトを立て直したのですか。
チームメンバーだった営業の先輩にすぐに相談して、というか泣きつきました(笑)。先輩が「そんなことないよ、最初は誰でも失敗する」と優しくフォローしてくれたおかげで、何とか立ち直れました。
そこからは必死でしたね。特に苦労したのは、インタビュー結果の分析からアイデアへとつなげるプロセスです。学校の授業では、あらかじめ用意されたスクリプトの一部を切り取って分析する程度でしたが、実務では膨大な定性情報の中から、どの発言を切片として切り出し、どう仮説を立ててサービスに落とし込むのかをすべて自分たちで考えなければなりません。
先輩デザイナーの動きを見ていると、一連のプロセスがもはや「職人技」のように感じられました。正解がない中で、自分たちなりの最もらしい仮説を見つけていく作業は本当に難しかったです。
──最終的に「マイナス200点」から挽回できたのでしょうか……?
模擬プロジェクトの最終プレゼンでは、プロダクトオーナー役の執行役員に向けて自分たちが考えたサービスを提案しました。結果として非常にポジティブなフィードバックをいただくことができ、大きな達成感がありました。
途中のプロセスは困難の連続でしたが、実践に近い環境でデザインプロセスの最初から最後までを一通り経験できたことは、その後の実務において計り知れない財産になりました。
「私たちよりプロダクトに詳しくなってくれた」。失敗を糧に挑んだ初プロジェクト
──模擬クライアントワークを終えて、本番のクライアントワークに入ったときのことを教えてください。
模擬クライアントワークの終盤と重なるタイミングで、本番のプロジェクトにアサインされました。「実務経験を早く積みたい」と強く望んでいたので、プレッシャーよりもうれしさが勝っていましたね。
模擬プロジェクトでの経験があったおかげで、「全体のプロセスがどう進むのか」「どこでどんな壁にぶつかるのか」という見通しが立っていました。そのため、初案件にもかかわらず、手探りでトレーナーに毎回確認することなく、ある程度自分から主体的にプロジェクトを前に進めることができました。
──初案件では、トレーナーの先輩からどのようなサポートを受けたのでしょうか。
手取り足取り教えるのではなく、基本的には自分に進め方を任せてくれるスタイルでした。
方向性が大きくズレそうになった場合は適切なタイミングで、すっとフォローに入って軌道修正をしてくれるんです。最初から正解を教えられるのではなく、一度自分なりに考え、自由にやらせてもらえる環境だったからこそ、実践的な思考力が身についたと感じています。
──実際にプロジェクトを遂行して、クライアントからはどのような反応をいただけましたか。
プロジェクトの終盤に、クライアントから「私たちよりもプロダクトについて詳しくなってくれましたね」という言葉をいただいたときは本当に嬉しかったです。
また、途中からプロジェクトに参画されたプロダクトマネージャーの方から「また一緒に働きたいですね」と言っていただけたことも、大きな自信につながりました。対面でクライアントと会話を重ねながらプロジェクトを進めるという初めての経験の中で、少しずつですが自分の価値を提供できている実感がありました。
信頼を獲得できたことで、最終的にはプロジェクトの契約延長をしていただき、成果にも繋げられたと感じています。
──前職のITコンサルタントとしての経験が、UXデザイナーとしての実務に生きたと感じる場面はありますか。
さまざまな場面で感じます。ロジカルシンキングや論理的に物事を組み立てる思考力は、UXの仮説設計や情報整理において強力な武器になっています。
また、クライアントワークでのコミュニケーションのお作法や、新しい業界やドメインに対するキャッチアップの速さも、コンサルタント時代に鍛えられた部分です。未経験からデザインに挑戦する際、こうした「ビジネスマンとしての基礎体力」があったことは、自分にとって大きなアドバンテージだったと思います。
未経験の壁を破るには「熱量」と「自ら学ぶ姿勢」が問われる
──現在は、新たなプロジェクトにも関わられているそうですね。
はい。今はtoCプロダクトのグロースを目的としたプロジェクトに入っています。これまでずっとtoBの裏側のシステムに携わってきた私にとって、自分が普段から使うような身近なサービスに携われるのは、本当に楽しいです。
toBのシステム開発は、絡まった糸をほぐすように「いかにユーザーの滞在時間や作業を減らし、効率化するか」が求められます。一方でtoCのサービスは、「いかに長く使い続けてもらうか」「新しい価値をどう提供するか」という全く異なるベクトルでアイディエーションを行います。
自分がもともとやりたかった「事業を作る」「ユーザーの顔を見ながらサービスを育てる」ということに直結しており、今は毎日がすごく面白いです。
──さまざまな経験を経て、これからグッドパッチでどのようなことを実現していきたいですか。

まずは目の前のプロジェクトで、ユーザーやクライアントにしっかりと響く価値を生み出し続けることです。
そしてもう一つ、大きな目標があります。それは、hatchを卒業した私自身が一人前のデザイナーとして成果を出すことです。実務経験ゼロのITコンサルタントだった私が、グッドパッチでプロのデザイナーになれたという事実を作ることが、会社への一番の恩返しになると思っています。
私がロールモデルになることで、「実務経験がなくても、熱意を実行力に変える力があればデザイナーになれるんだ」と勇気づけられる人が増えてほしいと心から願っています。
──最後に、デザイナーを志しているものの、実務経験の壁に阻まれて実践的な環境に身を置けずに悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。
デザイナーに限った話ではないと思いますが、未経験から挑戦するには「熱量」と「自ら学ぶ姿勢」がないと厳しいでしょう。
hatchというプログラムは素晴らしい環境ですが、ただ待っていれば誰かが手取り足取り教えてくれるわけではありません。自分で情報を取りに行き、失敗を恐れずに挑戦するスタンスが求められます。
グッドパッチにはデザインに関する深く実践的な知見が山のように蓄積されていますし、何より、失敗を許容し、それを学びに変えてくれる温かいカルチャーがあります。「デザイナーになりたい」という強い気持ちがあるなら、実務経験がないことを理由に諦めないでください。自分の覚悟と行動次第で、その壁は必ず越えられるはずです。
hatchという新しいデザイナー育成のかたち
デザイントレーニングチーム「hatch」は、現在のスキルだけでなく、これまでの挑戦やこれからの成長、そして期待と覚悟を大切にするために生まれました。「hatchってどんな取り組みなんだろう?」と感じていただいた方は、ぜひこちらの詳細記事もご覧ください。
