ケーススタディ

採用担当者にこそ、事業視点が必要だ──毎日放送の人事がワークショップで学んだ「採用計画の作り方」

人的資本経営への注目や採用難が続く市況を背景に、人事の役割はこれまで以上に重要性を増しています。とりわけ事業戦略と連動した採用計画を描くことは、企業の持続的な成長を左右するテーマです。

一方で、人事異動のある大企業では、人事に求められる高度な知見や判断軸を蓄積するのに苦労することが多く、次の担当者への引き継ぎに課題を感じる企業も少なくありません。

70年以上にわたりテレビ事業を担ってきた毎日放送も、そうした課題意識を持っていました。近年はコンテンツを利用したIPビジネスや新規ビジネスの立ち上げに注力するなど、事業環境が大きく変化する中で、経営や事業を踏まえた採用計画を立てられる人事組織への転換が求められています。

そこで同社が研修を依頼したのが、グッドパッチのグループ会社であり、戦略HRパートナーとして組織・人事領域を支援するピープルアンドデザインです。本記事では、毎日放送がどのような背景で研修を導入し、2日間のワークショップを通じて何を得たのかを紐解いていきます。

<話し手>
株式会社毎日放送:前田さん
株式会社毎日放送:飯坂さん
ピープルアンドデザイン:柳沢
Goodpatch ワークショップデザイナー:島田

人事に求められる役割が変わった 放送局が向き合う採用計画の課題

── 今回、ピープルアンドデザインにワークショップをご依頼いただいた背景を教えていただけますか。

毎日放送 前田さん:
皆さんご存知の通り、放送局では、テレビ以外の事業、具体的にはIPビジネスや新規事業の重要性が増しています。それに伴い、社員にも経営者マインドが求められるようになりました。それは人事部も同様で、経営や事業をきちんと理解した上で採用計画を立てる必要性が増していたのです。

株式会社毎日放送 前田さん

株式会社毎日放送 前田さん

──それで「採用計画の立案」をテーマにしたソリューションを探していたわけですね。

毎日放送 前田さん:
これまで毎日放送はテレビ事業のみに注力していたので、毎年同じようなペルソナで同じような人数の採用計画を立てていました。

ただ、現在では多くの事業に取り組み新しいビジネスを開拓するようになったため、これまでの延長上での採用計画では、今後うまくいかなくなるという懸念をずっと持ち続けていました。とはいえ、私自身もいちから採用計画を考えるような経験もなく、どうしたものかと悩んでいた中で、今回の研修のご提案をいただきました。

──研修を選ぶ際に重視していたポイントはありますか?

毎日放送 前田さん:
現メンバーの知識獲得はもちろんのこと、口伝ではない形で知見を残したいと考えていました。当社は大体3年ごとにジョブローテーションがあり、短いサイクルで人員が変わります。人事部の重要性が増す今、現在のメンバーはもちろん、次に異動して来る人が理論として理解できる形式でノウハウを伝える必要性が高まっています。

毎日放送 飯坂さん:
僕自身、2025年7月に人事部に異動したばかりですが、その前は8年間報道部門にいて、直近の4年間は上海支局に駐在していました。帰国後に全く異なる人事の仕事をすることになったので、研修の機会があるのはありがたかったです。

株式会社毎日放送 飯坂さん

株式会社毎日放送 飯坂さん

──人事系の研修を展開する企業はたくさんあります。なぜ、ピープルアンドデザインを選んでくださったのでしょう?

毎日放送 前田さん:
ワンキャリア主催の採用カンファレンス「採用ウルトラキャンプ」にピープルアンドデザインが出展していて、そこで偶然貴社を知ったのが最初の出会いでした。

柳沢さんの対応が非常に丁寧だったこともあり、即決でしたね。当社の事情を一つずつ聞いて、ただ研修を行うだけでなく、研修後の社内に知見を残そうと考えてくれているのが伝わりました。寄り添う姿勢を感じたのが決め手でしたね。コンサルティング企業は、それぞれのパッケージをお持ちで、それに弊社の事例を当てはめていかれるというイメージを持っていたので。

また「次年度からは、自社で自走できるような内容にしていただきたい」というワガママな相談にも前向きに対応いただき、驚いたのは覚えています。

「事業と経営を起点に」採用を考える、2日間のワークショップ設計

──研修では2日間のワークショップを行ったとお伺いしました。中身について教えていただけますか。

ピープルアンドデザイン 柳沢:
最初に相談をいただいたときは「採用計画を立てたい」というご要望でしたが、そのためには人員計画を策定する必要があります。なので「毎日放送さんの最重要課題は、採用の手前の人員計画にあるのでは」とお伝えしていました。

人員計画を作るには、自社の事業内容や展望を理解する必要があります。結果として、経営や事業について考える、人員計画について考える、採用計画について考える、という3部構成のワークショップをご提案しました。良い人事とそうでない人事を分けるポイントは事業や経営に対する理解だと考え、経営の俯瞰から始める構成にしています。

ピープルアンドデザイン 柳沢

ピープルアンドデザイン 柳沢

──前田さんは研修、という想定で考えていたと思いますが、ワークショップになったんですね。

ピープルアンドデザイン 柳沢:
そうですね。座学で一方的に話を聞くよりも、実際に手を動かしたり自分の意見を述べる方が定着の効果は高く、皆さんの状況に合わせた話がしやすいので、研修のフォーマットは自然とワークショップに落ち着きました。

毎日放送 前田さん:
ワークショップにはあまりなじみがなかったのですが、お話を聞く中で「楽しく、学びやすそうだ」という印象を受けました。そういう点も当社の雰囲気に合うのではないかと期待していたところもあります。

──2日間のワークショップというと、なかなかのボリュームだったと思いますが、参加してみていかがでしたか?

毎日放送 飯坂さん:
人事部のメンバーと一緒に考えながら手を動かしたこともあって、研修中はあっという間に時間が過ぎていった感覚です。私はこれまで報道がメインだったので、会社全体をビジネス視点で考える機会がなく、採用計画を立てること自体も初めてだったので、新鮮でしたね。

社会情勢が会社の業績にどう影響を与えるかなど、今まで考えたことがないテーマもあったので大変でしたが、最終的には全てのワークショップがつながって、納得感があったなと思います。

毎日放送 前田さん:
私はワークショップの様子を外から見ていたのですが、飽きさせない工夫が随所にあるのを感じました。一般的な研修というと、長時間になればなるほど、どうしても受講者が集中できない部分が出てくると思うのですが、今回のワークショップは、ダレる箇所がないように設計されていて。パッケージではなく、当社に合わせて、少しでもメンバーの頭に引っかかるように、手間をかけて全力でやっていただいたおかげだと思っています。

ピープルアンドデザイン 柳沢:
経済分析のワークで放送業界の情報を用意したり、毎日放送さんが伝統的に持っている文化を検討したりと、貴社の事業に合わせた内容にすることは設計段階から大事にしたポイントでした。知りたいことや自社の現状と内容が遠いと、「これって意味あるんだっけ?」という気持ちになりやすいですから。

ワークショップを通じて、メンバー間の「認識の違い」が浮き彫りに

──今回はグッドパッチのファシリテーション&コーチングチーム「Marble」をリードする島田さんも設計面に携わっています。どのような工夫をされたのでしょう。

Goodpatch 島田:
3部構成の研修内容自体は柳沢さんがしっかり設計していて、価値あるものだと思ったので、あとはより夢中になれる仕掛けが必要だと考えました。研修って、起伏がないと眠くなってしまうものですから(笑)。

私の方では、ワークショップのグランドルールの共有やアイスブレイクの時間を設けるなど、心理的安全性高く受講できる環境づくりと、「みんなでやる意味」を私の方では考えました。研修を受けるメンバー3人がそれぞれの意見をぶつけ合って、視点を共有しながら集合知を作っていく。それによって、多角的な物事の考え方ややり方が身につくだけでなく、内省も深まるかなと。協働体験の価値が生まれるよう、意識して設計していましたね。

グッドパッチ ワークショップデザイナー 島田

グッドパッチ ワークショップデザイナー 島田

毎日放送 前田さん:
参加した3人は一緒に採用活動をしているはずなのに、「そんなこと思ってたの?」と思うようなことがあって、側で見ていてとても面白かったです。特に、組織風土のグループワークが印象に残っています。「組織の状況や目指すべき姿」についての認識が、人によって結構違うんだなと。

毎日放送 飯坂さん:
普段同じ仕事をしているメンバーでも、会社の現状に対するイメージが違うことに驚きました。多少ズレることもあるだろうとは思いましたが、項目によっては正反対の考えをしていることもあって。例えば、「採用より育成/育成より採用」の項目では、「素質を重視して採用している」「すでにスキルがある人を採用している」と真逆の意見が出ていました。共通認識をそろえる上で、言語化や可視化がいかに重要か、痛感しましたね。

ワークショップの様子

Goodpatch 島田:
そういった違いは、きっと会社全体にもあるのだと思います。その違いをどうするのかを考えるのが事業戦略でもありますし、その現状に対して人や文化をどうするかという人事の話にもつながるので、すごく特徴的なワークだったなと思います。

毎日放送 前田さん:
合わない部分があっても、楽しくできましたよね。違いを責めるのではなく、理解できるのがいいなと思いました。元々の3人の雰囲気もありますけど、そういう空気をファシリテーションの中で作ってくれたなと思います。

ワークショップの様子

「候補者体験」までを考えることで、採用ペルソナを実務で「使える」ものへ

──採用計画を考えるというワークショップを通じて、特に学びになったと思うことはありますか?

毎日放送 飯坂さん:
具体的なペルソナのイメージをして、その人に合わせた採用方針やアクションを考えるのは、大変だけど楽しかったですね。採用の流れに合わせて、ペルソナの気持ちを考えていきました。初日に社会情勢から自社に必要な人材要件を考えていたので、「こういうところからペルソナも考えればいいのか」とつながりました。ペルソナの背景に厚みが出た分、よりリアルにイメージできるようになったと思います。

ピープルアンドデザイン 柳沢:
採用ペルソナを作成した後に、彼らにどういったアプローチをしていけば良いのか、という点を考えたワークですね。会社の採用ページや説明会、インターンなど、学生とのさまざまなタッチポイントでどういった感情を抱いてもらえたら理想的か、ということを考えてまとめていきました。

ワークショップの様子

──なるほど。採用候補者の「体験」を考えるというのは、デザイン会社らしいアプローチかもしれませんね。

毎日放送 前田さん:
ペルソナのワークは「これはすごいな」と感心しました。最後の方のワークでしたが、そこに向けて設計していたってことですよね?

ピープルアンドデザイン 柳沢:
そうですね。ペルソナの設定は人事や採用に限らずいろいろな場面で行われますが、作成したペルソナが実務にどう結びつくか分からないまま終わってしまう可能性が高いテーマだと思っていたので、島田さんにもめちゃくちゃ相談しました。

毎日放送 前田さん:
採用ペルソナ自体は、これまで自分たちでも考えていたんですが、アプローチが全然違って。ペルソナからアクションを考えるというプロセスの粒度が違うというか。私は10年以上、採用の担当をしているので、自分なりのノウハウはあるのですが、それをなかなか他の人に伝えられなかったんです。それを言語化して整理し、2日間で伝えてくれたことに驚きました。

毎日放送 飯坂さん:
まだワークショップを行ってから1カ月くらいしか経っていませんが、採用候補者のことを考える上で、早速ペルソナの考え方が生きています。説明会でも「どんな人が参加してくれるのか」を意識するようになり、内容をアレンジするなど、各メンバーが意識するようになったと感じます。

──それはすごい。共通認識が取れたことで、ピントが合った感じですね。

毎日放送 飯坂さん:
あとは、「今後のテレビ局ではコンテンツビジネスが大事になってくる」という話を説明会でするときの温度感というか、熱量が高まった気がします。今回の事業計画のワークを通じて、新規事業の重要性が数字として認識できたので、学生に対しても、確信を持って説明ができるようになりましたね。

毎日放送 前田さん:
そうやって飯坂さんが他部門の仕事を理解したのは、まさにビジネス目線を獲得したということですよね。新しい事業が拡大するときには、それをどう受け止めていいか分からなかったり、これまでの自分を否定するような気持ちになってしまったりすることがあるのですが、今回のワークショップで得られた部門を超えた会社全体としてのビジネス目線を持てれば、そこも変わるのではないかと感じました。

ワークショップの経験全てが学びに スキルの継承を通じて、自走できる人事組織へ

──行動変容という形でワークショップの効果が表れているのは、素晴らしいことだと思います。改めて、今はピープルアンドデザインのワークショップにどんな印象をお持ちですか。

毎日放送 前田さん:
「面白くしよう」という気持ちの強さを感じました。仕事を超えて、ご自身の気持ちで動いているように感じて、すごい集団だなと。そんな会社、なかなかないですよ。事前の想像を超えていました。

ピープルアンドデザイン 柳沢:
ありがとうございます。ピープルアンドデザインとしても「組織で働く人が仕事を楽しいと感じて、その結果人生を楽しんでほしい」というコンセプトでやっています。それを感じ取っていただいたようで、本当にうれしいです。

毎日放送 前田さん:
参加メンバーが研修後に自走できるようにワークショップを進めていただいて、実際に知見が参加メンバーに残っているのが確認できています。本当であれば、来年以降も継続してワークショップの開催をお願いすべきなのに、知見が残るような形で教えてくださっているのを感じていました。常に私たちのことを理解しようと寄り添いながら、課題や要望など丁寧に聞いていただいて、本当に感謝しています。

ワークショップの様子

──今回のワークショップの内容は、今後の業務にどのように生かせそうですか?

毎日放送 飯坂さん:
一番は、やはり採用戦略の立案ですね。今回学んだことで、今まで何となくでやっていた業務に関して、「こういう理由で〇人が必要」と理論立てて考えられるようになりました。答えがパチッと数字で出ることが分かったので、この経験を生かして来期以降の採用計画を立てていきたいです。

あとは雰囲気づくりですね。実は研修で実施いただいたアイスブレイクを説明会の場で試してみたりもしました。「自分でもできるかも」と思えるような距離感で、すべてが勉強になりました。今回のワークショップを経て、目の前の業務をこなすだけでなく、もっと広い視点で見られるようになったように感じています。会社の戦略を考えられるような人事になれるよう、頑張りたいですね。

毎日放送 前田さん:
メンバー3人が自走できるようになって、これから新しいものを生み出してくれることがめちゃくちゃ楽しみです。会社が用意する研修は往々にして、社員からすると、「今の自分には関係ないことだ」と思うことも多かったんです。でも、今回のワークショップではしっかり私たちを巻き込んで、自分ごととして捉えられる内容にしてくださいました。

こちらに寄り添った内容を準備いただけるので、他の研修もお願いしたいと思っています。スキルの継承は企業経営において大きな課題の一つですが、通常業務がある中、現場で行うのは困難です。今後も一緒に取り組んでいただけると大変心強いです。

Goodpatch. 満足度92%。デザイン会社が提供する研修プログラム。詳しく見る