Goodpatch closed its Berlin office. We will continue to help businesses through Tokyo HQ.

Client
株式会社クボタ
Expertise
Business/Strategy Design
Date

Overview

未来のサービス構想は、自由度が高い一方、正解がなく、絶対的な評価基準もないために難度の高いプロジェクトでもあります。株式会社クボタのデザインセンターとグッドパッチは、未来の価値創造の難しさに「デザインの力」で向き合いました。取り組みは2つのフェーズで実施され、前半は想像力を生かした未来シナリオを「短編小説」として描き、後半はその世界観を手触り感のある「ビジョンプロトタイプ」として具体化しました。未来の構想を形にするプロセスは、社内展示会での大きな反響を呼び、他部署との新たな連携の可能性を生み出す成果につながりました。

Client

株式会社クボタ

Kubota Corporation
約130年前に鋳物製造メーカーとして事業を開始して以来、水道用鉄管、農工用エンジン、工作用機械など、「食」「水」「環境」をキーワードに、社会に必要とされる製品を世に送り出してきました。モノづくりに対する真摯な姿勢を大切に受け継ぎながら、その百余年の長い歴史の中で培われた強みと特色を生かして事業の拡大を図り、新たな発展の歴史を積み重ねています。

Summary

支援前の課題

  • 未来のビジョンを漠然とした構想で終わらせず、「手触り感のある」具体的なアウトプットにつなげたかった
  • 未来の価値探索や未来を形作るプロセスに関する体系的な方法論が部内に不足していた
     

グッドパッチの対応とご支援後の成果

  • 未来予兆探索を通じてチームの視野を広げ、全8編の短編小説として感情移入できる未来シナリオを作成
  • シナリオの世界観を、AIとのインタラクションをテーマにしたビジョンプロトタイプとして具体化
  • 社内展示会で未来のサービスを動くプロトタイプとして披露し、他部署から高い関心と具体的な連携の相談を得ることに成功
  • チーム内で未来に関する雑談が活発化し、未来を考えることが当たり前になるという組織的な変化が生まれた

デザイン戦略チーム新設と「手触り感のある未来」への模索

プロジェクトの出発点となった「デザイン戦略企画チーム」の発足。同チームは、将来の社会動向や自社製品の将来を長期的視点で描くとともに、次世代製品のデザイン戦略を立て、社内イノベーションを加速させることが期待されていました。一方で、未来予測の体系的な知識が部内になかったことから、知見がある外部パートナーを探していました。

ただ漠然とした将来を描いて終わりではなく、しっかりと手触り感のあるものを作りたいと考えていました。(クボタ 穴井さん) 

未来探索の知見と実績を持ち、構想を具体的な形に落とし込める外部パートナーを探す中で、未来の世界観の想像からUIやグラフィックまで、一貫して高いクオリティやノウハウを担保してくれるだろうという期待から、グッドパッチにお声がけいただきました。

フェーズ1:参加型で行う未来予兆探索と「短編小説」による高解像度の未来シナリオ作成

プロジェクトは2つのフェーズで進行しました。最初のフェーズでは、未来のビジョンを描くための「未来予兆探索」と「シナリオ作成」をご支援しました。すでに全社で共有されていたメガトレンドに対する方針を踏まえつつ、「デザイナーならではのアイデア」を生み出すためのプログラムを設計。食料生産の領域に限定せず、チームメンバー6名全員が、個人個人の視点で未来を感じる予兆を広く探索する複数回のワークショップを実施しました。正解のない未来のデザインを進めるにあたり、参加者の思いや、参加者同士の異なる視点を重視することで、熱量と広がりのあるアイデアを生み出しました。

今思い返すと、僕も含めてアンテナというか視野はすごく広がったなと思いました。その視野の広がりが次のフェーズなり、他のテーマにも波及していっているところはあると思います。(クボタ 串田さん)

次に、集まった多様な視点やアイデアを基に未来の社会像とステークホルダーを定義。グッドパッチ側で構造化した内容を軸に対話を重ね、既存事業の周辺領域に凝り固まらず、社会や人にフォーカスしたデザインの視点で大事にしたい要素の認識をすり合わせを行いました。「感情移入できるように、シナリオの登場人物目線のものにしていきたい」という議論を経て、最終的には未来のビジョンを8編の短編小説というユニークな形式でまとめ上げました。

未来構想の資料は色々あるけれども、大体他人事っぽい書き方や『なんとなくこうなるだろう』みたいなものが多い中で、感情移入してしまうようなセリフまで出てくるのは初めて見ました。こういう形で未来を語るのはとてもデザインセンター的だし、非常にいいやり方になったなと思いました。(クボタ 穴井さん)

フェーズ2:未来シナリオを具体化して問いかける「ビジョンプロトタイプ」

第1フェーズで形になった未来の社会の構想を、より具体的なアウトプットに落とし込むため、第2フェーズがスタート。ここでは、作成した未来の世界観を引き継ぎつつ、先が読めない、標準化がしにくい食糧生産の現場で有効な手段として期待できる「AI活用」をテーマにしたUIプロトタイプの作成に軸足を置きました。当初描きたいシナリオが膨大にあったため、一番伝えたい価値をていねいに整理。プロトタイプする対象を絞り込むとともに、触れた人たちに何を感じてもらいたいかを明確にすることができました。
    
また、これまでオンラインでのコミュニケーションが中心でしたが、プロトタイプを具体化させる過程では、グッドパッチオフィスでのディスカッションも実施しました。ホワイトボードにイメージを描くことで、細かい仕様まで考えられていない箇所を発見したり、解決のための議論を経たりと、以降のプロトタイプ制作に必要なプロセスとなりました。

UIといってもAIとの対話をベースにすると「このときどんなセリフを言う?」というところまでちゃんと考えないといけない。全体のストーリーと、UIと、UI中のストーリーまでをどうするか3段階を考えるみたいな。いい感じに空気を見ながら連携して、有機的にそれぞれ同時に立ち上がっていったのも往復しながら感じましたね。(クボタ 穴井さん)

デザインの力で未来に触れ、社内にイノベーティブな対話を生み出す

本プロジェクトでは、ビジョンプロトタイプを社内展示会で披露し、フィードバックを得ることを目指しました。結果的に研究開発や事業部門から多くの方に来場いただき、たくさんの反響が得られました。
   
未来を感じさせるビジュアルが実際に操作可能なことに驚きの声が挙がる中で、実際にAIを使ったプログラム開発者から「これどういうプログラムを組んでますか?」「どうやって学習させたんですか?」といった、ビジョンプロトタイプのリアリティゆえに飛び出した具体的な問いも生まれ、期待を上回るような場となりました。社内展示会での「手触り感のある未来」の提示は、デザインセンターの活動価値を機能面以外でも示すことにつながり、他部署からの問い合わせや、具体的な連携の相談が舞い込むようになりました。

僕の野望みたいなところもあるのですが、クボタにおけるデザインセンターは依頼を受けてデザインをしている活動が基本ですけど、デザインセンターから依頼をしてモノをつくってもらえるようになったら楽しいなって思います。その予兆が見えてワクワクしました。(クボタ 串田さん)

クライアントの声

まさにみんなで同じ方向を向けるとか、みんなが何を考えているか分かるというのが、ひょっとしたら一番大きい成果だったかなと思っています。
 
このチームに配属されたころ、未来ビジョンを考える意義にあまり自信を持てないときがあって。結局ちゃんと事業に落としていかないと「何のための活動だったんだ?」となってしまうので、活動の扱いも成果の見せ方もすごく難しいなって悩んでいたんです。
 
未来の考え方を具体化してみんなに発信したことで、自分が思ってもいなかった波及や新しいつながりが生まれ始めて、それだけでも大きい成果だよなと。今は『こういう点で意味があるよ!』と自信を持って言えるようになったのは大きな変化です。(クボタ 穴井さん)

Credit

デザインストラテジスト:遠藤 英之
デザインストラテジスト:森村 典子
デザインストラテジスト:佐藤 大輝
統括/クオリティマネージャー:伊澤 和宏
BXデザイナー:大久保 彩佳
アカウントマネージャー:高橋 俊太郎

Next project
View more